「ニコニコ本陣スタッフ通信」vol.91
皆さんこんにちは道の駅日光の堀田です。
今回は先日最終回を迎えた「リモートコーラス」の堀田流作り方について語りたいと思います。
ニコニコ本陣チャンネルのリモートコーラス動画はミント・フレイバーズの皆さんにお手伝い頂いて40本作ることが出来ました。作り始めたきっかけなどは直林さんの記事を読んでください。
今までご協力いただいたメンバーの皆様&視聴していただいた皆様本当にありがとうございました。
今回は39作目の「早春賦」を元にお話ししたいと思います。
まずは素材整理から
撮影はメンバー各自にお願いしています、最初にピアノを収録しそれをイヤホンなどで聞きながら歌っている動画を撮ってもらっています。人によって自宅だったりスタジオ借りていただいたり色々ですが、なるべく静かで明るい場所を選んでもらっています。
撮影設定は720p30fps以上(できれば1080p以上)でお願いしています。
その他の設定や録画形式はかなりバラバラで、iPhoneがHEVCを導入した直後は動画が再生できなくなったりiPhoneのアップデートでrec2100導入後は色がおかしくなったりなどいろいろ勉強させていただきました。
編集時に各動画の色をそろえやすくするため動画の最初に白い紙を映してもらいます(でもみんなオート設定だから曲中にずれます…)、また機種によっては音と映像がずれてしまうため最初に手を叩いて同期しやすいようにしてもらっています。
またソートがしやすいようにファイル名は「パート名 名前」で統一していただいています。
撮ってもらった動画はGoogledrive経由で送ってもらっています、月末は低速モードになってしまう方もいたようでご迷惑おかけしていました。
画質面ではファイル転送サービスの方が良いのですが、Googledriveなら共有すればメンバー同士でも動画の確認が出来るのでこちらを使っています。
動画の基準になる音作り
動画の確認をしたらまずは基準になる音を作ります。
動画制作では一般的に音と映像は分けて制作します、テレビなどではMAは最後ですが一人で作っているので曲を覚えるのも含め最初に音から作ります。
音作りで使うソフト
Adobe Audition
AVID Protools
音をきれいに
動画はなるべく静かな場所で撮ってもらっていますがどうしても環境音は入ってしまいます、時計の音やバイクや踏切の音、夏場は蝉の声なんかも入っていました。
まずは一番邪魔な空調などの音をadobe Auditionの強力なノイズ除去機能を使って修正します。
基本的に空調のゴーという音は一定なので歌っていない無音部分からノイズだけをコピーし全体からその音を削除します
- 元データ
- ノイズをサンプリングして処理
- ベースノイズが消えました
それでも消しきれないノイズは手動で消したり、他の声と重ねてごまかしたり、どうしても目立ってしまう音はその部分だけカットしたり最悪録り直してもらいます。
音声編集の下準備
ノイズ除去をした音声は一度wavで書出しProtoolsで編集します。
本当はモノラルで編集をするのですが、今回はほぼ全員の元動画がステレオで、そのままの方が広がり感がでて良い感じがするのでステレオのまま編集します。
Protoolsへ取り込んだら前後の無音部分を削除し大まかな位置に並べます。またゲインを調整して全員の声が聞こえる程度にざっくりと音量調整をします。
全体の音の大きさを確認する「マスターフェーダー」とリバーブ(残響)を追加するための「AUXトラック」、各パートをまとめる「VCAグループ」をとりあえず必要分追加します。
- ノイズ除去して取り込んだデータ
- 人数分+αのトラック
縦のラインの調整
何となく合わせたら今度は音の縦のラインをしっかり合わせていきます。
ピアノと各メンバーの音声を並べ、パート毎にピアノのリズムに近いメンバーを選び基準にします。選んだら他のパートメンバーを基準のメンバーに合わせていきます。メンバー同士を合わせるときは「か行」や「た行」などの発音がしっかりした文字でなおかつ節の頭を選びます。そんな都合のいい歌詞が無い場合は頑張ります。
「な行」や「ま行」は口を閉じた状態から歌い始めるため音符の前にnやmのタメが出来ます。リアルで合わせている場合は周りの人と調整できますがリモートでは自分の感覚となってしまうため母音が出るタイミングがバラバラになってしまうことが良くあります。
「さ行」もsの長さがそろいにくいですが、こちらは音に合わせるというより個人の癖が強いように感じます。
パート毎にタイミングがあったら今度は全体を合わせていきます。たまにソプラノと言いつつ半分以上メゾパートを歌っていたり、そもそもパートとか関係がない編曲もありますがその場合はなるべく合う人同士で合わせて調整していきます。
最近は慣れてきたので2~4小節ごとの調整で自然に重なるようになりましたが、以前はピアノに合わせて1/8小節ごとに切り刻んでオタマジャクシ1匹ずつ調整していたりもしました。
Protoolsには音を縮めたり伸ばしたりする機能(TCE)があります、この機能を使えばピッチを変えずに音の長さをある程度調整することが出来ますがボーカルに使うと音質がかなり悪くなります。コーラスで人数が居ればある程度はごまかせるため気になるところはフェードと合わせて使いながら調整します。
ちなみにこの縦軸の調整は映像でも必要になるので大きく調整した場所等はしっかり覚えておきます。
- ざっくり縦軸を合わせます
- 細かく縦軸を合わせます
- なかなかそろわなくてすごく切り刻んだ曲
音量の調整
縦軸があったら各トラックへコンプレッサーをかけて音圧をそろえつつ音が割れないようにそろえたり、EQをかけてさらに余計な音をカットしたりします。
音が小さくならないようにしつつ音が割れないようにマスターフェーダーにコンプを入れます
各パート毎に各メンバーの声の大きさを整えます、途中で声量が大きく変わる場合はオートメーションで調整したり、歌の終わりがそろわない場合はフェードアウトさせたりします。その後コーラスパート全体の音の大きさを整えます、パートソロがある場合はそこだけ音量を上げたり大サビに向かって盛り上がっていく時は少しずつ音量を上げたりします。
コーラスがそろったらピアノやリバーブを合わせてみてさらに調整をし違和感があればまた個別で調整をしを繰り返します。
同時に音質の調整をします、最近のスマホは音が良くさらにメンバーによっては外部マイクを使ってくれている方もいるので、歯擦音の除去やノイズリダクションで削った分やマイクで拾いきれなかった音の調整が主になります。
- 音量調整後のフェーダーの感じ
- 音割れや音が小さくなり過ぎないように最後にもコンプ
- 声が大きくなり過ぎないようにコンプ
- リバーブは教会の客席をシミュレートしたものをよく使います
- ボーカルは人によってEQ変えますが10khz付近はだいたいみんな落とします
- ピアノはスマホマイクが苦手な高温と低音を少し上げてあげます。50hz以下や16khz以上は元々入っていないのでローハイのカットは要りませんでした
音の編集で出来ること出来ない事
先に書いた通り音の長さの調整は得意です、ただ伸ばすよりも縮めるほうが得意です。
切ったり貼ったりも得意です、完璧だと思ったら1音間違えていた~程度なら前後2小節分録り直してもらえれば多少環境が違っていても何となく綺麗に継ぎはぎ出来ます
音程の調整は多少ならできます、お手伝い頂いているメンバーは皆安定しているのでほぼ使いませんがハミング等で少し不安定な部分を調整したりもしています。
ブレスのタイミングは直せないことはないですがそろえてもらえると嬉しいです、ブレスなしだけなら何とかなりますが中途半端なところで入ると音が欠けてしまいます。これも普通に歌う分には周りと調整できますがリモートでは意識してそろえるようにしてもらえると嬉しいです。
歌詞の間違いは直せません、もし同じ歌詞を歌う場所があればそこを移植したりは出来ますがなければそこだけカットします。パート間違えも直せません、むしろ気づかずにそういうものだと思って曲を作ってしまいます。
あとできれば楽譜を頂けると嬉しいです。
こんな感じでまずは音を作って映像製作は次回以降に続く、